【コズミック アクシス】

草原の向こうの地平線に

 

黄色い太陽が沈んでいく。

 

幾日も 野を駆けてきた アドマイサルが後ろを振り返ると

 

ずっと向こうには

 

サルマンタームの高い山々がどこまでも続いている。

 

乾いた土色の山肌を

 

綿のような薄い雲がかかる。

 

地面の草の匂いを嗅ぐと

 

急に 両足に力が湧いてきて

 

それから

 

アドマイサルは このサルマンタームの大地の地中奥深くに隠された

 

秘密の宝について 思いをめぐらせた。

 

その宝は この地面を 掘っていけば見つかるというのか?

 

隠された洞窟を見つけて その先の

 

暗い部屋にあるのだろうか?

 

アドマイサルは はるか かなた

 

ヒラッサの台地を抜け

 

トゥーサの湿原を横ぎり

 

このサヴィアスグウリの世界の果ての地から

 

輝く宝の隠された大地 サルマンタームまでやってきた。

 

祖父のそのまた祖父の時代に

 

天空より 降ってきた輝けるものが

 

この大地のどこかに埋まっていると いう話…

 

それだけをたよりに やってきた。

 

その宝 レテル とよばれる何かは

 

物なのか 水のように流れ出てしまうものなのか

 

それさえも わからない。

 

ただ、大地の奥深くにしまわれている。

 

そして

 

人が神と合一して、

 

天と地を自在に 翔けるのに

 

必要なものらしい。

 

サルマンタームの大地で アドマイサルは

 

腰に差していた大剣を引き抜いて

 

「われ いま 神人合一せり」と口にして

 

大地に 思いのたけを込めて突き立てた。

 

次の瞬間 怒号のような音とともに

 

空から 稲妻が アドマイサルの目の前に落ちてきて

 

閃光がはじけた。

 

そして、光で目が眩むのがおさまると

 

日の沈んでいく方角から

 

女の人影がアドマイサルの方へ向かってやってくるのに気がついた。

 

柔らかい羽衣をまとったその女性は

 

アドマイサルの目の前まで来ると

 

まっすぐ彼の目を見てこう言った。

 

「ピセンデュアドの城よりやってまいりました王妃 カレイドスと申します。あなたは リクラフリムの王 アドマイサルですか?」

 

そう。

 

アドマイサルは 野を翔けて一日をしのぐ 日々を何年も続けていたが

 

実は 王だった。

 

そして、目の前の女性は 彼の夜見る夢のなかで幾度となく現れては 結ばれた女性だった。

 

アドマイサルは彼女の両肩に手をやりながら答えた。

 

「そうとも。私は リクラフリムの王アドマイサル。そなたと逢うことを ずっと夢見ていた。」

 

それを聞くと カレイドスは、ふっと全身の力が抜けたようになって

 

アドマイサルの腕の中へと倒れ込んだ。

 

「ああ。やっと出逢えたんだわ。あなたと逢うために、私は今まで王妃をやっていたの。」

 

そう言って 何かから解放されたかのような安堵感とともに

 

アドマイサルを恍惚の眼差しで見上げてくる

 

そんなカレイドスを

 

草原に立つ王は 優しく抱き上げて

 

二人は 涼しい夕風の吹くサルマンタームの草原のど真ん中で

 

抱き合った。

 

そして、アドマイサルは 自然と カレイドスの両手を握りしめ

 

自分の心臓のところへと持ってきていた。

 

そして、今度は片方の手を外して

 

カレイドスの心臓の鼓動をその手で感じた。

 

二人は同じ速さで 脈うっていた。

 

アドマイサルが カレイドスの全身をくまなく観察すると

 

自分と 彼女の 体のすべてが 一体となって脈をうっていた。

 

アドマイサルはカレイドスに聞いた。

 

「私は この地に レテルという宝を探しに やってきたのだけど、カレイドス… そなたは、何か そのことについて 知ってはいないか?」

 

カレイドスは 首を縦にふると

 

地面を指さしてこう言った。

 

「レテルは 天と地を繋ぐもの…。そして、私と王が この地の地中深くと、天のそのまた上の天へと 思いを馳せると 魔法がかかる というのは 聞いたことがあるわ。」

 

アドマイサルはカレイドスに 今それをやるぞ っていうことを目で合図をした。

 

カレイドスは 一瞬びっくりしたような表情をしたが、

 

すぐに 頷いた。

 

そして、次の瞬間

 

二人が、目を閉じて 大地の奥深くの行き止まりのところと 天の中心へと意識を向けると同時に

 

地面のど真ん中から 龍のように太くて力強い光の柱が

 

二人の体を通って 天へと駆け上っていった。

 

そして、

 

今度は 天から光の柱が二人に降り注ぎ 大地の奥深く中央のところまで

 

光が降りていった。

 

どれくらい時間が経っただろう。

 

幾度となく二人の体を通じて 強くなる 光の柱が

 

辺りを照らすまでになった時

 

アドマイサルとカレイドスは 生気に満ち満ちていた。

 

あふれんばかりの生命力が 全身をみなぎり

 

二人は 新しい王と王妃になった。

 

大空と大地全体にまで広がったような光を放つ人となって

 

今 まさに このサヴィアスグウリの世界全ての王と王妃となった。

 

この生命力を持ってして 不可能はない ということが

 

二人には即座にわかったからである。

 

そして

 

アドマイサルもカレイドスも 天には サヴィアスグウリの他にも

 

あらゆる星に世界があって、

 

そのどこへでも二人は行くことができるとわかっていた。

 

そして、その確信の源は

 

神と合一した 人としての 生命力にほかならなかった。

 

輝く秘密の宝 レテル とは

 

王と王妃が生み出す 生命力のことだった。

 

そして、天と地、世界のすべてを 治める 王と王妃であることを思い出した二人がそこにいた。

 

草原の中で

 

これから 光あふれる王国を創りだす二人が 立っていた。